30 May - 19 June ,1998
「空中戦」の手引き
女の子の正面図と側面図をもとに粘土で原形を作り、シリコンで型を取り、パーツごとに石膏を流し込んで型抜きし、各々のポーズに合わせて各パーツを接合し、接合部を修正した後、水性塗料で着色する。……作り方は以上。
手足はすべて一種類の型から抜き、頭部と胴体は二種類の型から抜いた。
色は、最初に描いた鉛筆画のモノトーンの配色に従って塗った。キャラクターは、おかっぱ、体操服という型と、少女顔、ナイスバディという型を組み合わせて作った。様々なメディアで流通している女の子のイメージの一つであり、特定のモデルはない。ポーズは、格闘技や喧嘩の類型的な形をアレンジしている。
原型は一体の人体彫刻(塑像)のように作られたが、最終形態は彫刻とは程遠いやり方で形成された。だからこれは、ばらばらの形の寄せ集め、パッチワークのようなものだ。しかも彫刻のようにしっかりと立っていず、鉄棒で宙に持ち上げられているため、不安定でもある。そういう状態で、女の子が地面などないかのようなポーズをとって戦っている。なんのためかは、全然わからない。とにかく互い以外には一切注意を払わず、魔人ブーとゴクウの戦いのように、ひたすら空中で喧嘩に没頭している形である。しかし、二体の間の空間はいつまでも固まったままだから、別に何も起こってはいないのだ。今までもこれからも。
彫刻と、彫刻でないフィギュラティヴな物の違い。そこに私ははっきりとラインをひくことができない。誰かがどこかで境界線をひいているのだろうが、それは私のラインではない。彫刻も絵画もさまざまな物のデザインも(たとえば女子とか男子といったものも)、私の住まう環境では、自立更生して自活の道を歩むことなく、すぐ脇道へ逸れようとする。本筋と脇道の違いを説明するのも、また難しかったりする。その不確定な心許ない場所に、短いアンダーラインをひくこと。そうやって、私は自分のいる場所を発見していく。
1998.5.30 大野左紀子
"板曲げ"
石膏にペイント 1998年